せいじ的にはタイトルのみ何度も耳にするものの、内容を全く知らない作品の代表。どことなく、銀河鉄道999のような銀河を旅する話なのだろうと解釈していた。なぜか夏目漱石の作品だと思っていたら、宮沢賢治だった。
ということで、児童文学に分類されるこの作品、全くもって児童には理解できない深い深い何かがある。登場人物が児童なだけで内容は死期を悟った宮沢賢治の生涯を振り返る自問にあふれており、振り返る過去のない児童には手に負えない作品だと思う。
幸せとはなにか、私は幸せなのか、私は誰かを幸せにできたのか、私の死は意味があるのか、私のこれまでの行いを私は心の底から誇れているのか。
そういった自問を銀河鉄道に乗るカムパネルラとジョバンニに重ねて、答えを探しているといった印象を受ける。
一定の答えを自分の中で見つけたようにも思えるが、それはあくまでカムパネルラとジョバンニの力で肯定してもらおうとしているだけのようにも思える。
自己犠牲の精神こそが、「いいこと」という一定の主張が読み取れるけれど、残されたジョバンニの動揺や、カムパネルラの父親の描写、助けられたザネリの思いなどから、一概にそういうことでもないという主張も感じる。実際カムパネルラは天上へはいかなかった。
幸せってなんだろうね。
「死」というものの傍らでは、「幸せ」は存在することのできないものなのかもしれないね。